(※写真:インドアゴルフレンジKz亀戸店)
ヘッドスピード40m/sですら、時速に換算すれば144km/hに達するクラブヘッドの動き。「まっすぐインパクトしなさい」等のアドバイスを軽率な机上の空論にしないためには、インパクトゾーンは勿論のこと「全体としてのクラブの動き」を把握する事がスイング技術には必須。肩がどうこう、腰がどうこう等の「見た目」はクラブの動きを作る手段でしかない。
PGAツアー屈指の飛ばし屋&ゴルフの科学者の異名を持つ、B・デシャンボー選手が若い頃から同様の練習器でシンプルなスイング軌道を作ったことは有名。
使い方は極めてシンプル。使用クラブと身長に合わせてライ角を調整し、円形のレールをなぞる事で「クラブの動き」を身体に刷り込むことができる合理的な器具。しかし、実際に使っている・使ったことがあるゴルファーは少ないのでは?
スイングプレーンは「2枚」ある!
歴史的レッスン書から生まれた、スイング(ホーガン)プレーン。
バックスイングで内側をなぞった「ガラス板」を、ダウンスイング時にはクラブヘッドで割らないようにするためのイラストは、アマチュアゴルファーの多くが悩む「アウトサイドイン」を改善するための有効なイメージとして現在も世界中で活用されている。
現在のインストラクションでは、シャフトの傾きに合わせた「シャフトプレーン」や右肘とボールを結んだ「エルボープレーン」などが存在。新たに登場したプレーンとの違いや使い方を混同・混乱しているコンテンツがいまだに多いのも事実。
「リアルタイム」でのホーガン信奉者かつ実践者。自身もグランドスラマーとしてメジャー9勝を挙げたビッグ3のひとり、G・プレーヤー氏。彼は「バックスイングに対してダウンスイングは異なるスイング軌道になる」つまり、スイング(ホーガン)プレーンは2枚あると断定・説明している。
誤解され続ける「タテ振り」と「縦振り」〜プレーン信奉者の理解と実践
大きなフックボールに悩んだ末に、フェードボールへ大改造を行った「後期ホーガン打法」をプレーヤー氏は採用せずにトッププロとしてのキャリアを全うした。その一番の理由は、フルスイングによる最大限の飛距離を獲得しながらボールコントロールを獲得したからに他ならない。
プレーヤー氏はホーガン信奉者でありながらウィークグリップもトップにおけるカッピング(オープンフェース)も採用する事なく、現代のニュートラルグリップ&クローズスタンスを採用。ストレートに近い飛距離を最大化したドローボールを武器にしながら、フックボールのミスにに悩むことなく最新ギアに対応し続けることができた。また、勝負強いパッティングやバンカーショットなどショートゲームも駆使。大きな怪我もスランプもイップスもなく、世界中のトーナメントで優勝を果たした。
その理由は、「ガラス板」に対する解釈・実践の違いではないだろうか。
飛球線後方から見て、インパクト以降の軌道は「わずかに立ち」上がる
物理的にはインパクト後のクラブの動きは単なる結果でしかない。しかし、「フォロースルーはそれまでの動きがどのように行われたのか?を知る鏡である」と唱えたのは、メジャー最高勝利数18を誇るJ・ニクラウス氏。
「アップライトスイング」と言われたスイング軌道は当時プロアマ問わず世界中のゴルファーにされた反面、その「中身」を実践できず。それどころか、「腰に悪い」「安定感が悪い」「現代クラブにマッチしない」など、特に日本では天才ゆえの特殊なスイング方法と認識されることに。
自身の著書で「ただスイング面をアップライトにしてもダメ」とニクラウス氏はハッキリ述べているのだが。
ビッグデータ蓄積も、読み解く「眼」はあるのか?
膝を曲げ中腰のアドレス状態から、ダウンスイング時に「インサイドから」インパクトした場合、後半であるフォロースルー時も「ガラス板に当たらない」事は、それこそ「机上の空論」ではないだろうか?
クラブにはトゥダウンが発生し、グリップの位置は(特にドライバーでは)アドレス時より高くなる。クラブ、腕と手首の角度は「まるでノーコック」のように半径には遠心力が発生する。地面反力などの流行り言葉を借りなくても、両脚の蹴りや伸びと左右の肩が縦に動く事で「ガラス板」は割れるのが正しい。
昔話ではない。現代のPGA選手は「常識的」にタテ振り
これを約40年近く前に「タテ振り」と名付けたのが、プロを教えるプロのパイオニアである後藤修氏だった。ニクラウス全盛時代に多くのゴルファーが取り入れたアップライトを強調した「縦振り」とは根本的に異なる箇所は、全部で3つ。
1、ダウンスイング時よりグリップの位置は僅かに上に抜ける
は、模倣が簡単な反面フックボールが出やすいデメリットがある。一方で、多くのアマチュアゴルファーが悩むスライスをドローに改善する「即効性」メリットもある。
しかし、1よりも
2、シャフトが僅かにグリップ軌道より上にある
3、シャフトの上にヘッドがある
の方が重要。
1〜3が揃った「タテ振り」でないと、単に軌道がアップライトな「縦振り」つまり似て非なるものになってしまう。ニクラウス氏と近い形で実践した日本人プレーヤーの代表選手は、ジャンボ尾崎選手だった。
「タテ振り」は、決して昔のスイング方法ではない。むしろ、タイガー・ウッズ選手が登場してからのPGAツアー選手をはじめとした世界のトッププロたちに「はっきり」と見てとれる。
ニクラウス氏にもプレーヤー氏にも、多くの継承者&実践者が数多くPGAツアーで活躍している。グローバルでは、すでにビッグデータをもとに読み解かれ「オン(〜の上)〇〇」などの言い方を使っている。また、無意識・意識的に関わらず「タテ振り」は、身体とクラブが効率的に使われインパクトされているのか?確認する「バロメーター」であるべきもの。
流行の部分的方法ばかりを気にし過ぎて「木を見て森を見ず」になる前に、全体を見る習慣をつけてはいかがだろうか?